整骨院の開業資金の目安は?調達方法についても解説します

整骨院の開業を目指す人にとって「開業資金」は特に重要な問題のひとつです。

この記事では

  • 「どんな費用が発生するんだろう?」
  • 「どれくらい用意すればいいのかな?」
  • 「どうやって資金を集めればいい?」

といった疑問にお答えします。

整骨院の開業資金相場について

整骨院の開業資金相場について

整骨院の開業資金は、大きく「設備資金」と「運転資金」に分けられます。

まずはそれぞれの内訳と相場を見ていきましょう。

設備資金

設備資金とは開業までに必要となる初期費用のことです。

相場は「400万円〜1,500万円程度」と幅がありますが、たとえば「居抜き物件」や「中古の医療機器」などを利用すればある程度費用を抑えられるでしょう。

設備資金には以下のようなものが挙げられます。

物件取得費

店舗や駐車場などの契約にかかる費用(敷金、礼金、保証金など)

内外装工事費

店舗の設計や内装工事・外装工事にかかる費用

機器費用

各種医療機器やレセコンの購入にかかる費用

什器・備品費

施術用のベッドやリネン類などの購入にかかる費用

広告・宣伝費

看板の設置やホームページ作成、チラシの作成・配布などにかかる費用

 

①物件取得費

店舗を借りる場合、テナント契約時に敷金・礼金・保証金・前家賃・仲介手数料といった費用が発生します(※必ずしもすべて発生するとは限りません)。

たとえば「保証金×10カ月分 + 礼金×1カ月分 + 前家賃×1カ月分 + 仲介手数料×1カ月分」という条件で家賃20万円のテナントを借りたケースでは、260万円(20万円×13カ月分)かかることになります。

②内外装工事費

店舗がスケルトン(空のテナント)や他業種からの転用の場合、整骨院にふさわしい内外装に変えなくてはなりません。

また居抜き物件であれば工事は最小限に抑えられますが、それでもある程度の工事は必要でしょう。

一般的な相場としては100万円〜500万円程度です。

③機器費用

低周波治療器・超音波治療機器・温熱療法機器といった医療機器や、レセコン(レセプトコンピュータ)は高額です。

購入するかリース契約をするか、購入する場合は新品か中古かなどによっても異なりますが、一般的な初期費用としては200万円〜600万円程度が相場でしょう。

④什器・備品費

整骨院で使用する什器としては、たとえば施術用のベッドなどがあります。

施術の際に使用するタオルなどのリネン類や医療用消耗品も、開業までにある程度まとめて仕入れておく必要があるでしょう。

費用の相場は20万円〜100万円程度です。

⑤広告・宣伝費

広告・宣伝も重要です。

店舗に掲げる看板、ホームページ、インターネット広告、チラシ(紙媒体)、紙面広告など方法はさまざまですが、少なくとも数万〜50万円程度は見積もっておく必要があるでしょう。

⑥その他

上の表には入っていませんが、もしフランチャイズで整骨院を開業する場合はフランチャイズ契約の「加盟金」も必要になります。

金額はフランチャイズによって幅があり、100万円から3,000万円程度です。

運転資金

運転資金とは開業直後から「日々発生する」資金のことです。

一般的には「50万円~80万円程度」が相場となっていますが、テナントの立地やスタッフの有無、フランチャイズ契約の有無などによって大きく変わります。

運転資金には以下の費用が挙げられます。

地代・家賃

テナントや駐車場代の賃料

人件費

雇用するスタッフの給与など

通信費

電話料金(契約料・使用料)、インターネット料金などの費用

リース代

医療機器やソフトウェア、レセコンなどの契約料

組合費・保険料

事業者組合の会費、賠償責任保険料など

仕入費用

医療用消耗品や衛生材料の購入費用

水道光熱費

水道代、電気代、ガス代などの費用

消耗品費

事務用品やガソリン代などの費用

宣伝・広告費

ホームページ更新、インターネット広告、チラシの作成・配布などにかかる費用

①地代・家賃

テナント代や駐車場代などの地代・家賃は、毎月同じ金額が発生する「固定費」です。

運転費用を抑えるためには固定費の節約(できるだけ安いテナントを借りるなど)がポイントになります。

②人件費

スタッフの人件費も「固定費」です。給与額の相場は雇用形態(正社員かアルバイトか)や資格の有無、スタッフの年齢、整骨院を開業する地域などによって異なります。

③通信費

固定電話や携帯電話、インターネットの基本料などは「固定費」になります。一方、従量制の通話料や通信量は「変動費」です。

④リース代

医療機器やレセコンなどのリース代も「固定費」です。

⑤組合費・保険料

整骨院の協同組合に支払う月会費、賠償保険の掛け金なども「固定費」になります。

⑥仕入費用

医療用消耗品や衛生材料などは消費量に応じて毎月の仕入れが変わる「変動費」です。

⑦水道光熱費

店舗で使用する電気やガス、水道代なども「変動費」になります。

⑧消耗品費

事務用品などの消耗品、業務で使用するガソリン代も「変動費」です。

⑨宣伝・広告費

開業後のホームページ更新、インターネット広告の運用、チラシなどの印刷・配布にかかる費用も運転資金の一部です。こうした費用は基本的に「変動費」になります。

⑩その他

もしフランチャイズ加盟しているなら、毎月のロイヤリティ(ブランド使用料)も運転資金です。

ロイヤリティ料は定額の場合もあれば、売上の一定割合(10%など)に設定されていることもあります。

開業資金(初期費用)はどれくらい必要?

開業資金(初期費用)はどれくらい必要?

整骨院の開業時に「設備資金」は欠かせません。

しかし「運転資金」の方も、あらかじめ6カ月分程度用意しておくことをおすすめします。

開業直後から売上が伸びることはなかなかありませんし、保険診療なら入金までに3〜6カ月程度かかることが一般的だからです。

整骨院開業の初期費用=設備資金+(運転資金×6カ月分)

仮に設備資金が1,000万円、毎月の運転資金が80万円程度とした場合、開業時の初期費用として少なくとも1,480万円(1,000万円+80万円×6カ月分)は必要になります。

整骨院の開業資金を調達する

整骨院の開業資金を調達する

整骨院の開業資金には「まとまった金額」が必要です。

しかしこれらのお金をすべて自己資金(貯金)でまかなえる人は少ないでしょう。

むしろ多くの人は「自己資金と融資(借金)」を組み合わせて開業資金を調達しています。

なお融資には公的融資と民間融資の2種類があります。

公的融資

公的融資とは国や自治体が中心となって行う融資です。

具体的には財務省が所管する「日本政策金融公庫」が有名ですが、一部の地方自治体でも開業資金融資制度を用意しています。

日本政策金融公庫の融資制度

日本政策金融公庫ではさまざまな融資制度を用意していますが、このうち整骨院の開業資金として利用しやすいのが「新規開業資金」と「新創業融資制度」の2つです。

新規開業資金は「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」を対象とした融資制度で、最大で7,200万円(運転資金は4,800万円まで)の融資が受けられます。

「Uターン等により地方で新たに事業を始める」「女性」「35歳未満または55歳以上」など一定の要件を満たす場合や利率の優遇制度もあります。

新創業融資制度は「新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方」が対象です。

利用の際は「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」が必要ですが、その代わり担保や保証人は原則不要となっています。融資金額は最大3,000万円(うち運転資金1,500万円)です。

公式サイト『日本政策金融公庫

自治体の開業資金融資制度

自治体の中には、地域発展の促進を目的に新規創業支援の公的融資を行っているところもあります。

以下の自治体/制度は一例です。

東京都中小企業制度融資『創業』|融資・助成制度

東京都による公的融資制度で、都内でこれから創業しようとする個人や創業から5年未満の中小企業者などが対象です。

最大3,500万円までの融資を受けることができます。

創業支援融資|神奈川県

神奈川県による公的融資制度で、神奈川県内で1カ月以内に創業予定の個人や2カ月以内に設立予定の法人、創業後5年以内の中小企業者などが対象です。

融資金額は最大3,500万円となっています。

大阪府制度融資開業サポート資金・地域支援ネットワーク型

大阪市経済戦略局の中小・ベンチャー企業支援拠点「大阪産業創造館」の支援を受けることを条件に、大阪市内で1カ月以内に創業予定の個人や2カ月以内に設立予定の法人、創業後1年未満の事業者などを対象とした公的融資制度です。

融資金額は最大3,500万円です。

民間融資

民間融資とは、銀行や信用金庫といった民間金融機関が行っている融資です。

融資条件や融資金額はさまざまですが、基本的には「実績」がないと借り入れは困難です。

これから整骨院を開業する場合、希望通りの融資額を受けるのは難しいでしょう。

家族や親族からの借り入れ

融資とは少し違いますが、家族や親族からお金を借りて開業資金を用意する人もいます。

ただし年110万円を超える金額を借りる場合、返済を証明できないと贈与税の対象となる可能性があるため注意が必要です。

たとえ親族間のやりとりでも、きちんと契約書を作成して、銀行振込などの方法で返済することが大切です。

融資を受ける場合の注意点

融資を受ける場合の注意点

公的融資でも民間融資でも、融資の審査では「事業計画」を重視します。

現実的な裏付けに基づいた収益計画がなければ融資の審査をパスすることはできません。

また日本政策金融公庫の「新創業融資制度」のように、一定割合の自己資金が要件となっているケースもあります。

少なくとも初期費用の10%、できれば20〜30%程度の自己資金を用意しておくことも融資をスムーズに受けるためのコツです。

他にも税金(住民税や健康保険料など)の滞納や、カード利用料の未返済などもないよう注意してください。

まとめ

開業費用まとめ

整骨院の開業には、一般に初期費用として1,000万円以上の資金が必要です。

これらの資金は融資によって調達することもできますが、スムーズに融資を受けるには一定以上の自己資金も大切です。

これから整骨院の開業を目指す方は、事業計画の作成と合わせてコツコツ貯金することも忘れないようにしましょう。